経営者の想い

先代経営者の心構え(第3回)

事業承継において、譲り渡す側(先代経営者)の心構えは、事業の永続性を左右する重要な要素です。まず、多くの経営者が「生涯社長でいたい」「意思決定権を渡したくない」といった「本音」を抱えていることを、本人も継ぐ者もきちんと向き合うことが大切です。この本音を押し殺すと、「まだ若い」「景気が回復したら」といった理由で承継が先送りされ、のちに問題が次々に湧出する事態を招きます。

潔く手放す覚悟と早期準備の重要性

次に、経営者は「会社をあの世まで持っていくことはできない」という現実を受け入れ、「もとから会社などなかった」くらいに潔く手放す覚悟が必要です。承継の準備は早いに越したことはなく、元気なうちに後継者を決め、必要な手続を進めるべきです。

「併走期間」での役割分担と「堪忍」の心

また、承継を目前に控えた「併走期間」では、譲る側はバトンを渡すまで全力を尽くしつつ、渡した後はペースダウンし、役割を明確にすることが重要です。後継者が若く、能力や経験が不足していると感じても、「最初から優秀な経営者はいない」と理解し、失敗や経験を通じて成長させる「堪忍」の心で受け止めるべきです。時には反発も成長の証と捉え、忍耐強く見守ることが求められます。

承継の「形」を明確に示す

さらに、事業承継の「形」を内外にきちんと示すことも不可欠です。社長就任披露パーティーや挨拶回り、社長室の明け渡しなどを通じて、意思決定権者が交代したことを明確に示し、先代は新社長に権限を委譲した態度を貫くべきです。これにより、周囲も新社長を真のトップとして認識し、新社長自身の覚悟も強まります。

子息への承継と「中継ぎ」起用の回避

最後に子息への承継の場合は、親として「どうすれば素晴らしい経営者にできるか」を考え、そのための場や役割を与える行動を移すことが正しい姿勢です。例外的に後継者が就学中の場合を除き、「中継ぎ」の起用は避けるべきです。それは、後継者の成長機会を奪い、組織に無用なリスクとムダを生じさせる可能性があるからです。(KML)

(アイキャッチはGeminiで生成しました。)

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