未来志向

事業承継を成長のチャンスに変える!経営戦略としての承継(第2回)

事業承継は企業の未来を再構築するものである

「事業承継」と聞くと、多くの経営者の方は「引退」や「廃業」といった言葉を連想されるかもしれません。後継者を探し、会社の資産や株式を譲渡し、次の世代にバトンを渡す。もちろん、そうした側面も重要ですが、私たちは事業承継を単なる「引継ぎ」としてではなく、企業の未来を再構築する一大プロジェクトとして捉えるべきだと考えています。

事業承継は、経営者がこれまで築き上げてきた歴史を振り返り、自社の強みと課題を徹底的に洗い出す絶好の機会です。そしてそれは、次の世代が新たなビジョンを描き、それを実行するための経営戦略を練り直す最高の舞台となります。本コラムでは、事業承継を単なる過去の清算ではなく、未来に向けた成長戦略として捉えることの重要性について、お伝えしたいと思います。

事業承継を契機とした「見える化」と「戦略の再構築」

事業承継を成功させるための第一歩は、会社の現状を徹底的に「見える化」することです。ここでいう「見える化」とは、財務諸表や事業計画といった数字だけでなく、創業者の思いや経営理念、企業の歴史とともに練り上げられてきた技術、顧客との関係性、従業員のスキル、組織風土といった無形の資産をすべて棚卸しすることです。

具体的には、以下のようなプロセスを通じて、経営戦略の再構築を図ることができます。

創業の思い、経営理念の問い直し:何のために会社があるのか、この会社は何を目指すのかを創業時の思いからさかのぼって会社の存在意義を見つめ直します。

事業ポートフォリオの見直し:コア事業が会社の存在意義に沿ったものかを見直すとともに、その強み、課題、収益性と将来性などを分析し、継続か撤退かの判断や新たな事業分野への進出を検討します。

組織・人材戦略の再設計:後継者育成はもちろんのこと、組織体制を刷新し、新たな事業戦略を実行できる人材を適所に配置します。

技術・資産の再評価:長年培ってきた技術や特許、不動産などの有形・無形資産を再評価し、それらを最大限に活かす方法を探ります。

このプロセスを通じて、経営者自身もこれまで漠然と抱いていた自社の強みや課題を明確に認識することができます。これは、次の世代が確信を持って新たな一歩を踏み出すための強力な羅針盤となります。

専門家の知見を活かす多角的なアプローチ

以上のような「見える化」「戦略の再構築」を推し進める上では、多面的な考察や整理が必要となることから、多岐にわたる専門知識が必要となります。一人の人間がこれらすべてを網羅することは現実的ではありません。だからこそ、弁護士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士といった各分野の専門家が連携するチームでのアプローチが不可欠です。

私たちのような多士業連携の団体は、こうした専門家のネットワークを最大限に活かし、経営者の皆様が抱える複雑な課題に対し、ワンストップで最適なソリューションを提供します。

事業承継は「終わり」ではなく「始まり」

事業承継は、決して経営者個人の「引退」を意味するものではありません。それは、これまで培ってきた歴史と伝統を尊重しつつ、新たなビジョンと戦略で企業を再起動させる「第二の創業」です。

過去の成功に安住せず、未来に向けて自社の存在意義を問い直す。そして、後継者とともに新たな経営戦略を策定し、それを実行していく。このダイナミックなプロセスこそが、企業を次のステージへと導く鍵となります。

「事業承継を成長のチャンスに変える」こと。この視点を持つことで、私たちは単なる事業の引継ぎにとどまらず、未来の経営戦略を練り直すという、より大きな価値を創造できるのです。(HTL)

最近の記事

  1. 事業承継を成長のチャンスに変える!経営戦略としての承継(第2回)

  2. 経営のバトンは「想い」とともに(第1回)

アーカイブ